ガルフ・ストリーム5月号:
*この記事はテキサス州ヒューストンの地方紙ガルフ・ストリーム2004年5月号に掲載されました。

New Yorkに生きる日本人ジャズ・シンガー 霧生ナブ子 (Computerdojo.com米元)


私がジャズ・シンガー霧生ナブ子さんに初めて会ったのは2004年4月2日のHouston Baptist Universityでのコンサートでした。あいにくの小雨の中初めての大学構内を少し探して会場のMabee Theaterを見つけました。会場にはすでに多くの人たちが集まっており入り口では稲田さんがご家族総動員でサイン入りのCDを売っておられました。売り切れてはまずいと早速1枚買って最前列中央の席に家族と共に座りました。間もなく今回のツアーのプロデューサーである三島さんのごあいさつがあり神妙に聞くふりをしながら心の中では「早く歌をきかせてくれー」とじりじりしていたのでした。

やがてナブ子さんが黒字にシロの水玉模様というシックな出で立ちで登場。やはり服装からしてジャズっぽい。一曲目は「Blue Skies」。ナブ子さんの声は低い。ややハスキーでやや鼻にかかった、良い意味でユニークな声。ジャズにはぴったりだし病み付きになるタイプだと思いました。この曲を聴きながらナブ子さんには申し訳ないが20年くらい前に東京の武道館で聞いたWillie Nelsonのコンサートを思い出していました。良い音楽は時と空間を越え、文化や言語の壁さえも越えて愛されるという良い例ではないでしょうか。

その後Gershwinの曲やジャズのスタンダード・ナンバーを数曲披露して「April Fools」という曲になりました。今回ピアノを弾いているLarry Hamさんの作詞作曲で二人のCD「WE TWO」の1曲目に収録されているのですがこれがメチャンコ良い。「April Fools」といつまでも実らぬ恋が捨てられない「Foolな女」を掛けたバラードでナブ子さんがハスキーな声で切なく歌い上げます。私はBillboard Top 10に入ってもおかしくないと本気で思っています。第一印象で感じたとおり病み付きになりました。短い幕間の後またCDから数曲そしてLarryさんのピアノソロによるDuke Ellingtonメドレー。このパフォーマンスだけでもチケット代$15を払う価値は十分あります。メドレーが終わるや否やほぼ満員の観衆によるstanding ovation。 LarryさんはLionel Hampton Orchestraと世界中を公演して回った大御所で、もっと多くの人たちに聞いて欲しかったというのが正直な気持ちです。今回の唯一のボサノバ調「No More Blues」を歌っている彼女の顔は歌うことが楽しくてしようが無い、歌さえ歌っていれば悲しみも苦しみも全て忘れてしまう、まさにそんな表情でした。それに答えるかのようにLarryさんの表情からも同じパッションが伝わってきます。この二人は本物のアーティストだとその時思いました。観客席もやっと乗ってきたなというころで早くもラストナンバーの「All of me」。アンコールに答えてナブ子さんは観客と「上を向いて歩こう」の合唱で幕を閉じました。



その翌日から2日間に亘ってナブ子さんとLarryさんはジャパン・フェスティバルに出演され、またレストランKubo'sでも毎夜公演されました。ジャパン・フェスティバルのステージの後お二人にインタビューする機会がありましたのでご報告します。


Q: 「ナブ子」って珍しいお名前ですね。本名ですか?

N: 芸名です。本名はNobukoなんですけどアメリカではナブコという発音になってしまい、それならいっそこれを芸名にしちゃおうって思ったんです。


Q: お二人のご出身は?

N: 東京の代官山です。

L: 生まれはNew York State、20年間Manhattanに住んでます。

Q: ナブ子さんはいつ、どういうきっかけでNew Yorkへ?

N: 1996年、留学を考えていた時のことなんですが、N. Y. C.のあるバーで80歳くらいのおばあちゃんがジャズを歌っていたんです。その歌がとっても良くてあの町の層の広さっていうか奥の深さみたいなところに驚きまた惹かれました。それでジャズの勉強をするならここしか無いって思ったんです。それで初めNew York City Collegeに入りそこを卒業後大学院であるQueens Collegeに進みました。

Q: Larryさんとはどうやって知り合ったんですか?

N: Queens Collegeの卒業リサイタルで伴奏をして頂いたのが出会いで、後日私の父(実はジャズ・ピアニストなんですけど)と知り合いだったことがわかりました。世界って狭いなーと思いました。

Q: これからの仕事のスケジュールは?

N: 当分の間N. Y. C. のSushi TaroというところでLarryと歌う予定です。ぜひお寄り下さい。(154W 26th St between 6th Ave & 7th Ave Tel:212-691-4306)

L: 僕には中国上海に2ヶ月来て欲しいという依頼があるんだけど、ちょっと長すぎると思っていて、2週間ぐらいなら行ってもいいかなと思ってる。

Q: April Foolsすごく気に入っているんですがいつ書かれたの?

L: 去年のApril Fools直後に作った曲なんだけどやっと念願かなって4月1日に(Kubo'sで)演奏できました。

Q: ヒューストンは初めてとのことですが第1印象は?

N: 竜宮城に来た浦島太郎のような、夢のような気持ち。

Q: 竜宮城ですか???

N: フフフ、初めての町で刑部さん(三井O.S.K.)以外は知り合いがいなかったのです。しかもその刑部さんがお仕事で不在、かわりに三島さんが迎えにきてくださったんですけどちょっと不安だったんです。でも皆さん本当に良い方ばかりでもうすっかり仲良くなってしまいました。それから暖かい。N.Y.はまだ40度くらいで寒いんです。

L: 金曜日のコンサートは本当に家族的で心温まる良い雰囲気でした。

L&N: もう帰りたくナーイ。(意訳すれば、Houstonに来て本当によかった。〜元東京銀行の宮地支店長の名言です。)

多くの方々のご尽力と不思議な縁で知り合うことができたナブ子さん、アメリカと言う大海に飛び込んでがんばっている彼女の姿を見て私もがんばらねばと勇気付けられます。陰ながら応援していますのでさらに大きく羽ばたいて下さい。皆様、彼女の今後の様子はhttp://www.nabukojazz.com で追跡できます。